障害年金申請のタイミング
通院を始めて1年半以上経過しても症状が重く、日常生活や仕事に支障が出ている場合は、障害年金の申請を検討してみてはいかがでしょうか。
障害年金は、日常生活や収入が不安定になった際に受けることができる制度です。
受給が認められれば、治療に専念し、回復後に復職することもできます。
復職後も年金が自動的に停止するわけではなく、更新の際に見直される可能性があるだけです。
収入の一部が確保できることで、精神的な安定が得られることも、治療に役立つと思います。
診断書作成をお願いする前に
障害年金の申請には、医師による診断書が必要不可欠、最も重要です。
医師に症状が軽いと判断されてしまい、障害年金の対象外とされないためにも、医師とのコミュニケーションが大切になります。
診断書の作成をお願いする際には、日常生活の状況を的確に伝えるために、現在の辛い症状や生活状況をまとめたメモをお渡しすると良いと思います。
生活状況については、診断書の裏面に記載されている「日常生活能力の判定」の内容に沿うようなメモが良いでしょう。
以下の項目について、「一人で生活する場合にできるかどうか」という基準で考えてみましょう。
「日常生活能力の判定」の項目と内容
(1)適切な食事について:配膳などの準備も含めて、適当量をバランスよく摂ることができるかどうかなど。
(2)身辺の清潔保持について:洗面・洗髪・入浴等の身体の衛生保持や、着替え等ができるかどうか。また、自室の清掃や片付けができるかなど。
(3)金銭管理と買い物について:金銭を独力で適切に管理し、やりくりができるかどうか。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物ができるかなど。
(4)通院と服薬について:定期的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるかどうかなど。
(5)他人との意思伝達及び対人関係について:他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団行動が行えるかどうかなど。
(6)身辺の安全保持及び危機対応について:事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時、他人に援助を求めるなど、適正に対応することができるかどうかなど。
(7)社会性について:銀行での金銭の出し入れや、公共施設等の利用が一人でできるかどうか。また、社会生活に必要な手続きが行えるかどうかなど。
医師に生活状況を正確に把握してもらうことで、ご自身の症状や生活状況に沿った診断書を作成してもらえる可能性が高まります。
一人暮らしの場合には
「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」によると、一人暮らしであっても、支援の状況や必要性を踏まえて検討するとされています。
以下のような状況があれば、メモなどにまとめて、医師にお伝えしましょう。
家族の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている状況を伝える
(家族の援助の参考例)
・家族が食事を用意して持参、または冷凍食品を定期的に送ってくれる。
・金銭管理が困難なため、家族が代わりに家賃や光熱費を支払っている。
・通院や服薬を忘れないように、毎日電話やメッセージで教えてくれる。
(福祉サービス利用の参考例)
・訪問看護師が服薬指導や健康管理を行っている。
・ヘルパーが買い物や掃除を行っている。
・配食サービスを利用して、栄養バランスの取れた食事をしている。
・精神科デイケア等を利用して、日中の活動やコミュニケーションを確保している。
(地域や民間サポートの参考例)
・近所の住民が買い物や通院の付き添いをしてくれる。
・地域のボランティアが相談や話し相手になってくれている。
家族の援助や福祉サービスを受けていないが、実際はその必要性がある状況を伝える
(支援の必要性はあるが、受けていない理由の参考例)
・掃除や洗濯が出来ず、不衛生な環境で生活していたり、食事が不規則で栄養失調の可能性があるが、支援が必要であることを認識できていない。
・支援を求めることへの抵抗感や、過去のトラウマから、頼ることを避けている。
・うつ症状などで意欲が低下し、助けを求める行動にまで至らない。
・金銭管理ができておらず、借金が増えている。
・通院が負担で治療を中断している、または服薬を忘れることが多い。
・福祉サービスなどの支援が必要だが、誰に相談すればいいかわからない。
・住まいが過疎地で、福祉サービスが近くにない。
一人暮らしになった理由や時期について
(参考例)
・長期間の病気により、家族との摩擦や疲労が重なり、同居が難しくなった。
・家族の急病・事故など、予期せぬ理由で一人暮らしをせざるを得なくなった。
・社会復帰を目指して一人暮らしを始めたものの、支援のタイミングや準備が不十分で、病状が悪化し、結果的に孤立してしまった。
・退院した後、十分なサポートが得られず、一人暮らしを余儀なくされた。
・グループホーム等が満員などの理由で利用できない。
働いている場合には
働いていても障害年金の対象になる場合があります。
診断書には、以下の重要なポイントを記載してもらいましょう。
職場の方に書面を作成してもらえるとより確実です。
難しい場合は、自分で内容をメモにまとめ、医師に渡して診断書にしっかり反映してもらいましょう。
共通項目
- 仕事の状況
仕事内容、働き方、職場で受けている支援内容、同僚との意思疎通の状況など。 - 支援がない場合の影響
職場の援助や配慮がない場合に予想される困難。 - 就労の影響
就労が原因で、日常生活能力が著しく低下している場合は明確に記載。
月収の状況だけでなく、実際の就労状況や働き方を総合的に評価するとされています。
精神障害の場合
- 安定性の確認
就労が安定しているかどうか、または継続するための援助や配慮の有無。 - 発病前と発病後の就労状況の変化
従前の就労状況と比べて、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無。 - 勤務状況の影響
頻繁な欠勤、遅刻、早退がある場合は明記。 - 臨機応変な対応の困難さ
意思疎通や柔軟な対応が難しい状況の有無。
知的障害の場合
- 単純・反復作業
保護的環境下で、仕事内容がもっぱら単純反復作業であるなど。 - 意思疎通の状況と管理の必要性
同僚との意思疎通が困難かつ不適切な行動により、常時の管理や指導が必要な状況の有無。
発達障害の場合
- 単純・反復作業
保護的環境下で、仕事内容がもっぱら単純反復作業であるなど。 - 柔軟な対応の困難さ
執着が強く、臨機応変な対応が難しい状況の有無。 - 意思疎通の状況と管理の必要性
同僚との意思疎通が困難かつ不適切な行動により、常時の管理や指導が必要な状況の有無。
診断書の内容をしっかり確認
診断書が完成したら、その内容をしっかり確認することが大切です。
診断書の内容は、現在の病状又は状態像、療養状況、生活環境、就労状況などを総合的に評価されます。
特に、診断書裏面に記載されている「日常生活能力の判定」の評価の平均と、「日常生活能力の程度」の評価を組み合わせることで、どの障害等級に相当するかの目安が示されています。
☆日常生活能力の判定について

☆障害等級の目安となる表

※表内の「3級」は、障害基礎年金の場合には「2級非該当」となります。
※個々の等級判定は、診断書等に記載される 他の要素も含めて総合的に評価されるものであるため、目安と異なる認定結果となることもあり得ることに留意してください。
診断書が軽く記載されていると感じた場合は、医師に再度相談してみることも一つです。